バージニア工科大銃乱射事件

犠牲者のご冥福をお祈りします。また、アメリカ社会の抱える病理と銃の問題を再認識しました。

しかし、僕が第一報をネットニュースで見たとき最初に気になったのは、容疑者(敢えて犯人とは呼ばない)の韓国系学生がどのような銃器を使用したのか、ということだった。32人を射殺したとなると自動小銃かショットガンを使用したのでは、と思った。やがてTV報道で詳細が徐々に明らかになるにつれて使用銃器が二丁のハンドガンであることがわかった。二丁ともオートマチックで22口径のワルサーとグロッグ(グロッグはおそらく9mm口径。ちなみにワルサーもグロッグもどちらもヨーロッパの銃器メーカーである)。そこでまた考えた。報道によれば容疑者はまず学生寮で二人を射殺し、その約二時間後に教室で三十人を射殺し自分も銃で自殺したということである。また、TVニュースでは容疑者に足を撃たれたが運良く助かった学生も紹介されていた。ということであれば、である。容疑者が最初の二人の射殺の後に銃に弾丸を装填し直したとしても、その後の教室での使用弾丸数は少なくとも32発必要である(報道による死傷者+容疑者に各一発使用したとして)。しかしグロッグとワルサーの二丁の総装填数は最大で30発である(僕の計算によれば。グロッグ18+1発、ワルサー10+1発)。つまり、容疑者はおそらく予備のマガジン(弾倉)を用意していたはずだ、と僕はこの報道の時点で想像した。その後NBCに容疑者が送ったビデオが公開され、やはり容疑者がハンドガンだけでなくダブルのホルスターとナイフで武装していたことが判明した。おそらく予備マガジンも複数携帯していたと思われる。
それがどうした、という声が聞こえるが、僕はここで想像せずにはいられない。容疑者は銃撃戦の末三十二人を射殺したのではない。おそらく恐怖で凍りついた学生たちを一人ひとり冷静に処刑していったのであろう(つまりこの事件は正確に表現するなら銃の“乱射”事件ではない)。だから弾丸はそれほど必要ではなかったかもしれない。一人に対し一発かせいぜい二発。オートマチックのハンドガンでは発射し終わった弾丸の薬莢は自動的に排出される。ヴァージニア工科大学の床はどのような材質だったのだろうか。薬莢は床に落ち乾いた金属的な音を立てていただろう。それでも銃に装填してある弾丸だけでは足りない。オートマチックでは最後の一発を発射し終わるとスライド(遊底)と呼ばれる部分が最後尾まで後退しバレル(銃身)がむき出しになる。そしてグリップの横にあるボタンを押すと自重でマガジンが落下し床におちる。被害者は一瞬そこに希望の音を聞いたかもしれない。弾切れだ、助かるかもしれないと。しかし一瞬後その希望は絶望に変わったにちがいない。容疑者が予備マガジンを装填したからだ。

この事件をきっかけに銃大国アメリカで銃規制の問題が再燃するかどうかはわからない。僕らが想像する以上に、アメリカにおける銃の問題は政治的、経済的、社会的、文化的に絡み合っている。